PCデポの真相
PCデポで解約手数料20万円近くを請求されたと話題になっている。
何を隠そう、私も過去にPCデポで働いていた経験がある。PCデポではほとんどの店舗で、販売をするゾーンと、修理を担当するゾーンに分かれている。私は両方を経験したが、どちらかというと修理を担当するゾーンの方が長かった。
パソコンの修理に来店されるお客様は、そのほとんどが本当に困っているお客様である。(当然であるが)「とにかく早く直さないと仕事が・・・」「レポートが書けなくて・・・」「どうしても無くしたくないデータが・・・」と、自分ではどうにも出来ず、最後の頼みの綱で店舗にやってくるのだ。
こういう状態だと、客と店、どちらが強いかというと弱みを握っている店側(つまり解決する能力がある店員)が強い。大抵の場合、客側はもう問題を自己解決する事を諦めていて、「金が掛かってもいいから直して欲しい・やってほしい」という状態で来店するのである。
そんな状態だから、「修理代は3万円です」と言われても、「治るんだったら仕方ないよね」と言ってついつい払ってしまう。「もう面倒なのでやっちゃってください」と、同じ内容で他店がいくらでやってくれるかも調べない。実にカモである。
みんなが知っているように、PCデポの修理金額や設定料金は高い。(ただしこれは単発での金額の場合)それに、単発の客は1度売り上げが上がる(つまり修理をする)と、2度目の売上チャンスがなかなかない。
なぜかって?その場は治るかもしれないけど、PCだっていつかは壊れてしまう。そして壊れたときに、またPCデポに来てもらえる保証なんてどこにもない。つまり、「あそこは高いから次から別な店にしよう」と1度きりになってしまう可能性が高いという事だ。それじゃ企業として美味しくない。
そこで、PCデポはもう大分前から囲い込み戦略を始めた。プレミアムサービスという月額会員サービスだ。(もちろん他の家電店だって似たようなサービスはやっている)このサービスに加入していると、パソコンに関連するサービスを受けたいときに、「通常金額より安くで受けられる」というメリットがある。(他のメリットももちろんあるが)
それに、このサービスの加入者が増えると企業側も美味しい。プレミアムサービスはクレジットカードでしか加入できないので、毎月必ず一定額が企業に収益として入ってくる。(物も何も売らなくても!)
仮にパソコンサポートのサービスがあっても、店舗内の人件費(多少のアルバイト代)で対応できるというデメリットが非常に少ないのである。
パソコンなんて、余程の事をしなければ早々壊れるものではない。年配者であれば、特定の作業しかしないので、リカバリー(初期化)が必要になる機会も少ない。運が良ければ、3年間何も無く収入だけ得られるという魔法のサービスである。(企業にとって)
しかし、このプレミアムサポートだけの利益だけでは、限界が見えてきた。そう、パソコン本体が売れなくなってしまったのだ。
インターネットの普及により、日用品からパソコンまで一般家庭でも、もはやAmazonや楽天などを使ったインターネット通販が普及した。
今や家電店に行くのは、現物を直接見てインターネットで買うつもりの人間か、冷やかしに行く人、インターネットとは無縁の生活をしている人ぐらいだろう。(世の中ではこういう人を”情報弱者=情弱”とも言ったりする)
パソコンの原価に店舗の利益を上乗せして、企業利益を稼いできた企業側にとって、パソコンが売れないというのは大打撃であり、会社を存続させていく為に、減った売り上げをどこかで代わりに上げなければならない。
そこで登場したのが、インターネット契約とそれに絡む独自サービス、そして付帯契約だ。
ご存知だと思うが、家電店などはインターネットの会社ではない。インターネットの取次店(いわば代理店)なのである。取次店はインターネットの契約をお客より獲得すると、インターネットサービスを提供する会社(NTTやOCN等)からインセンティブ(報奨金)を得る事ができる。これが実に美味しい金額なのだ。オプションプランにもよるが、光TVなどを付けると最大で1件あたり8万円程度の報奨金が手に入る。
自宅に「インターネットに加入しませんか?」と営業マンが営業に来たり、電話が掛かってきたりした覚えはないだろうか?「月々の利用料金が安くなりますよ!(多分)」という口車に乗せられてはいけない。利用料金は仮に安くなっても、その方法で契約してはまず間違いなく損をするからだ。
「インターネット契約して頂けると、パソコンを1台プレゼントします」というパターンもある。2~3万円で買えそうな小型ノートパソコンを貰えるが、海外製の動作速度も遅いノートパソコンを貰っても子どものおもちゃにしかならず、1-2年も持たず飾りになるだろう。酷いところは中古のノートパソコンを差し上げます!というパターンもある。これも加入したらマズイパターンだ。
昔からあるが、パソコンやその他の商品と一緒にインターネット契約をすればパソコンが値引きされるのはよく聞く話だが、5万円で「凄い!5万円引き!」と思うかもしれないが、それでも企業は3万円ぐらい契約だけで利益が上がるのである。
話が大分脱線したが、、、結局今回のような問題は、そのような代理店による契約報酬を目当てにしたやりすぎ行為により発覚した問題であると言えよう。
ちなみに、店頭による契約は「クーリングオフ制度」の対象外だ。今回は80歳の男性が対象だったということで、契約内容について十分に認知できる状態であったかという話になってくるが、、、、判断は難しいところだろう。しかし店頭スタッフが親身になって「この人が本当に必要としているサービスはなんだろう」という事を考えてあげれば、過剰なサービスプランの契約を結ばせてしまうという事にはならなかったであろう。本当に本人にとって必要なサービスを提供できたのか?という点について言えば、恐らくNOだ。
今はアルバイトであっても、店舗責任者から過剰な売上と契約ノルマを課せられている。店舗によっては来店客数がほとんどいないのに「なぜ売れなかったのか」「なぜ契約できなかったのか」等と質問される事だってある。アルバイトからすれば「知ったことじゃない」とも言いたくなるだろう。そのような管理者側からの圧力により、店頭スタッフが売上や契約実績だけを重視して正常な判断力を失った結果がコレだったとしたら、企業体質的な問題でもあると言えるのではないだろうか。
仕事柄、パソコン販売・パソコン修理・インターネット契約など、様々な事に係っているが、私が抱えている地域の顧客は、必ずといっていいほど再度依頼がある。依頼内容により時には高い金額を提示しなければならない時もあるが、肝心なのは利用顧客が最終的に「満足」して頂けたかどうかであると思っている。
これは利用顧客の裕福度にも比例する。年収200万円の年金生活のAさんに、「お見積りは3万円になります」というと「えっ、高い・・・ですね」と言われるが、年収1000万円の会社経営者のBさんに「お見積りは3万円になります」というと、「それだけで済んで良かった」と言われる。そのような場合、Aさんには私であれば「では、今回は特別に半額にさせて頂きますので、次回もまたご依頼をお願いしますね。」とお伝えする事にしている。単発のみを取り扱っている分、受注を逃せば売上も上がらず、リピートが無ければ顧客数は減る一方だからである。サービスを高く感じるか安く感じるかは、利用客の金銭感覚によって変わるという一例である。
私の事業は利益重視の事業ではないので、相手の懐具合で金額をある程度調整しているが、大手企業はとにかく利益を出さないといけないので、こういう細かな調整が出来ない分、一部利用者から不満が出るのは仕方が無いのかもしれない。
店舗の人間が言う事だけが全て正しいと思わない事だ。あなたはお店の人間が、商品を見せた時に「当店が一番安いですよ!」と言われて、「そうなの!?じゃあ買おうかしら!」なんて決めてしまう人だろうか。
今はインターネットで全ての情報を得られる時代である。あらゆる商品が日本全国の店舗の価格と比較でき、最も良い商品を最も安い方法で手に入れられる時代なのである。
このホームページの名目にもなっているとおり、「無知は罪」、つまり「知らなかったゆえに損をした」というのは、より物事を知ろうと努力しなかったゆえの結果であり、「詐欺だ」「問題だ」と訴える利用者にも問題があるのである。
パソコンの修理代金も、インターネット契約の毎月の支払い料金も、携帯電話の利用料金も、あなたが今払っている金額は本当に適正な金額だろうか。もう一度見直す事をオススメしたい。
執筆:Kagoshiman
Photo:Trend Japan
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